遊舎工房スタッフブログ

このブログは遊舎工房スタッフが交代で記事を書いていくというものです。自作キーボードにまつわるものなど、なんでもOKな縛りがないものとなっていますのでバラエティに富んだものになるかと思います。

日本発ハイエンドキーボードHuyu65(Proto Ver.1)

お久しぶりです。
らふです。 2月の半分もおわりに近づき、そろそろ入舎から一年が経つ頃合いですが 東京では雪が積もるなど色々指先に厳しい季節ですが、しっかり打鍵を鍛えていく所存です。

キーボード

今回はmasroさん主導で製作されている、アルミ削りだしキーボードHuyu65を個人的にお借りしてのレビューになります。 *1

Huyu65は外注ではなく、デザインから製作までを本人たちが行っている、国内外において数少ないカスタムキーボードです。

構成

Huyu65について

以下のような特徴があります。

  • 一般的な65%キーボード
  • アルミ削りだしの本体
  • カラーリングを指定可能なトップ/ボトムケース
  • カスタム可能な真鍮ウェイト/バッジ
  • 真鍮、ポリカーボネートの指定可能なプレート
  • ガスケットマウント
  • FlexcutなPCB
  • マルチレイアウト対応PCB
  • 複数の加工

最近のハイエンドのトレンドを持ちつつ、シンプルなデザインに仕上がっているのが特徴です。

1つ1つ解説をしていきます

一般的な65%キーボード

一般的な65%...例えば、KBD67シリーズ(KBDFans)やVega(ai03)などが有名ですが、あれらとは何も違わないレイアウトです。
1.75U Rshift、アローキー+3キーとかなり一般的です。
Poker互換の次くらいには見かける、それくらいには慣れ親しんだレイアウトではないでしょうか?

最近では市販のキーボード市場でも見かけるようになりました。 Huyu65 PCB

アルミ削りだしの本体

ハイエンドではおよそほとんどがCNCです。
Huyu65もちろんCNCです。
しかし、自動車関連の塗装や、個人での金属加工を行っているプロのCNCなので、塗装時の吸着率や、加工の精度などは他のキーボードと一線を画すと言ってもおかしくはないでしょう。

真鍮ならではの処理に始まり、触って初めてわかるレベルの精度の加工など、どれ1つとってもハイエンドに相応しいデザインをしています。
Huyu65 case Image from Gyazo

カラーリングを指定可能なトップ/ボトムケース

Huyu65における最大の特徴とも言えるのがこのカラーリングの指定です。
私が驚いた部分の1つです。
masroさんの意向として欲しい人に欲しいものをがあり、利益度外視のものになるためにこのカラーリングの指定が可能となっています。
おそらく国内では初でしょう。

真鍮のウェイト

ハイエンドでも、最近ではIKKI68などの廉価帯のキーボードでも増えてきました
ただのおもりとして使う訳ではなく、ボトムケースをくり抜いてデザインとするのも今では比較的一般的と言えます
Huyu65でももちろん備えています
その他バッジ同様、オリジナルのロゴを入れることも可能です
v2 from Gyazo v2 from Gyazo Weight

真鍮/PCのプレート

FlexCutなPCBを活かすにはもちろん必須のプレートです。
こちらもにも、柔らかさを最大限まで引き出すことができるように、過不足ない程度のスリットが入っています。 Huyu65 Plate

ガスケットマウント

聞き飽きるくらい聞くと思いますが、現在のカスタムキーボードの圧倒的主流なマウント方式です。
昨年は廉価なガスケットマウントが多数のメーカーからも出ましたが、ハイエンドでも主流なのは変わりません。

話は変わりますが、日本発の有名なカスタムキーボードとして、 Bakeneko60/Bakeneko65 があります。
廉価でガスケットマウントとは違った打鍵感を楽しめるので、此方も興味がある方は調べてみるとよいかもしれません。

FlexCutなPCB

Ver.1ではKrush65のPCBを利用してケースを作っていますが、Ver.2ではオリジナルのPCBになるそうです。
最近でもDZ60 V2などPoker互換PCBや、IKKI68 R2にも採用されるようになってきたので今後もこれが主流になってくるのでしょうか?

DZ60 V2 Flex cut Soldered PCBshop.yushakobo.jp

[GB] Ikki68 Aurora R2shop.yushakobo.jp

マルチレイアウト対応PCB

ベースがKrush65ですので、マルチレイアウトも若干それに沿った形になっています。 Layout Ver.2でもおそらくこの辺が大きく変わることはないと思います。
ロータリーエンコーダーがなくなります。

複数の加工

Huyu65ではパーツ単位で別の加工が行われています
たとえばVer.1では、

等が挙げられます。 Ver.2では品質改善のため、ミル加工からサテン加工になります。 mill

簡易レビュー

ボトムケース

Huyu65のボトムケースデザインの特徴の1つでもあるブロッカーはトップケースと寸分の狂い合わせもなくしっかりと合わせられています。
ガスケット取付用のガイド(空間)がしっかりあるのは個人的にはプラスなポイントです。

Ver.2では小さなガスケットをケース側で合わせやすいような設計に変更されています。
bottom

トップケース

ムラが全くと言っていいほどない。
そんなアルマイト塗装です。
手触りもてとてもよく、比較対象がよくないとはいえども、3~4万円台のキーボードと比べると質感が明確に違うのが見て取れます。

寒色系は色の精度が出にくいと聞いていますが、素人目で見てもかなり事前に聞いて想像していた色味に近く、驚かされました。

写真ではかなり明るい紺色ですが、実際は1m離れると濃いグレーに見える程度には暗い色を再現できています。
top

Image from Gyazo

内部から見える部分も同様、極端なムラなどは見受けられませんでした。

Ver.2ではシンプルさを残しつつ、曲線美が増えたデザインとなっています。
Ver.2 case 2 Image from Gyazo

プレート

真鍮プレートはお目にかかれていないため評価が難しいですが、ポリカーボネートプレートを見ている限りでは同様程度の質はあると見て問題ないでしょう。

プレートのスリットだけでも、一度お見せしたいくらいにはケース同様、質の高さがうかがえます
とても個人的な話ですが、プレート下部のロゴが点対称気味なのがとてもよいです。
Image from Gyazo

簡易打鍵レビュー

打鍵感

ハーフプレート並みの柔らかさがありつつも、安定感のある底打ちを作り出すことができているのは個人的にもっとも評価が高い部分です。
Pianoは底打ちが重めなため、柔らかさが目立ちますが、Alpacaなどであれば底打ちのスイッチの感触をしっかりと感じることができるのではないかと思います。

Ver.2では既に厚み3mm、端に取り付けるタイプに変更されるようですし、さらなる打鍵感の向上が見込めると見て相違ないでしょう。(たとえばOwlabs Mr.Suitのようなガスケット)

打鍵音

個人的にもっとも気になる部分でした。

結論だけでいえば、いい意味で期待を裏切られたと思っています

スリットにより真鍮の静音性が保持できなくなっていると思いきや、そんなことはなく、ハーフプレートと比べるとしっかりと静かですし、音がちょうどよい抜けかたをするため、底打ちの響きが指先からしっかりと奏でることができます。
ケースフォームなどがないため反響音はありますが、残滓のような「キンっ」といった感じの音です。

気になった部分

  1. ゴム足がない
  2. ケース上部とボトムケースのズレ
  3. トップケースとブロッカーの誤差による干渉(?)
  4. ウェイトとボトムケースの段差の誤差によるズレ
  5. ロータリーエンコーダー

1 ゴム足がない

これはVer.2で解消されます。
一般的なものではなく、横長のものを採用しています。
Poron同様、ゴム足も金型から特注しているそうなので、10000ピース程度ならすぐに作れるそうな。 gum

2 ケース上部とボトムケースのズレ

これもVer.2で解消される予定です エッジの処理周りもかなり改善されているそうなので、いまからでも楽しみです BEFORE ↑ Before
↓ After AFTER

3 トップケースとブロッカーの誤差による干渉(?)

これに関してはmasroさん本人も悩まれているそうで、ほとんど設計上仕方のない部分になるそうです 誤差を減らそうと感覚を開けるとデザイン上微妙になります。
デザイン上整えるためにキツくしようとすると誤差が出ますし、外す、あるいは取り付けが若干キツくなります。
一長一短なので、難しいところなのだと思います。 Image from Gyazo

4 ウェイトとボトムケースの誤差によるズレ

写真や動画ではほとんど見えませんが、ウェイトにはデザインや触り心地、ウェイトを傷つけないように段差が作られています。
しかし、ウェイトがかなり特殊な構造のため*2、ボトムケースの精度によってはこの段差がない、あるいは深くなってしまうことがあるそうです。
実際触ってみましたが、触るとすぐに分かるレベルでのズレですので改善されていることを祈るのみです。

Ver.2でもおそらく同様に切り出す必要があるので、誤差ズレはおそらく出てしまうかもしれません。

ロータリーエンコーダー

残念ですが、製品版(Ver.2)ではなくなるようです。 バッジをどちらを取るかといえばバッジなのですが、65%の自由度考えると欲しいと思いつつも、やはりデザイン的には...と悩ましいです。
が、無いことによるデメリットはないので、見なかったことにしようと思います。

リンク先

Twitter twitter.com

Youtube www.youtube.com

Huyu65進捗報告 qiita.com

lit.link lit.link

雑記

今回、レビューの口実にハイエンドを触りたかったので、もともと個人のブログで書く予定でした。
自分のWebサイトも作りましたし、その知見のためにも...と思っていました。

しかし、わざわざキーボードに関連する仕事に携わっているのだからコチラで書こうと思い至った次第です。
それができるのも、舎員ならではなのでしょうか?

今回はVSCodeを活用してみたかったので、はてなMarkdown記法で書き起こしています。
いい体験になりました。

この記事はEtude60 + SP-Star Polaris Whiteで書きました

遊舎工房

shop.yushakobo.jp

*1:今回お借りしたものはProto Type Ver.1であり、正式に販売されるものはこれらのレビューのものとは違う可能性があります。 ご了承ください

*2:ウェイトに合わせてケースを作るのではなく、ケースに合わせてウェイトをつくっているので、ウェイトを斜めに切り出す必要がある